「通関士試験の合格率は15%前後」
そんな数字を見て、身構えている方も多いのではないでしょうか。私も勉強を始める前は同じでした。
ただ、実際に受験を終えて振り返ると、「合格率の数字だけを見て難易度を判断するのは、少し違うかもしれない」と感じています。
この記事では、通関士試験の合格率の推移という事実ベースの話に加えて、50代・未経験の私が実際に受けてみて感じた”体感の難易度”を正直にお伝えします。
数字だけでは分からないリアルな部分を知りたい方の参考になれば嬉しいです。
通関士試験の合格率の推移
まず事実として、通関士試験の合格率を確認しておきます。
直近10年でみると、合格率はおおよそ7%〜24%の間で推移しており、年によってかなりの振れ幅があります。もっとも新しい令和7年度(第59回)試験では、受験者6,322名に対して合格者954名、合格率は15.1%でした。前年度の12.4%からは回復した形ですが、3科目すべてで合格基準点の引き下げ(補正)は行われていません。つまり、「合格率が上がった=問題が易しくなった」とは言い切れないということです。
この「補正の有無」は見落とされがちですが、合格率の数字だけを見るより、実は重要なポイントだと思っています。
合格率が高い年は「簡単な年」なのか
「合格率が高い年に受かった人は、簡単な試験に受かっただけ」という言われ方を目にすることがあります。ですが、これは必ずしも正しくないと私は考えています。
通関士試験は、各科目60%以上という絶対的な基準があります。合格率が高い年でも、この基準自体が下がるわけではありません(基準点の補正が入る場合は公式に発表されます)。
合格率が変動する背景には、その年の受験者層の違いも関係していると考えられます。実力のある受験者が多く集まった年は、基準を超える人数が自然と増え、結果として合格率は上がります。逆に、その翌年は実力者がすでに合格して受験者層から抜けているため、合格率が下がる、ということも起こり得ます。
つまり、合格率の上下は「試験そのものの難しさ」の変化というより、「その年たまたま基準を超えた人数」の変化である可能性が高く、どの年の試験も難易度の本質は大きく変わっていないと考えるのが妥当だと思います。
通関士試験の難易度が高いとされる理由
合格率の数字以外にも、通関士試験が難しいと言われる理由はいくつかあります。
- 通関業法・関税法等・通関実務の3科目すべてで60%以上を取る必要があり、1科目でも基準を下回ると不合格になる足切り制であること
- 輸出入や税関に関する専門用語が多く、日常生活で馴染みがないため、最初のとっかかりがつかみにくいこと
- 出題範囲自体は広くないものの、その分ひとつひとつの論点が細かく、深いところまで問われること
これらが重なることで、「合格率の数字以上に難しく感じる」試験になっているのだと思います。
実際に受けてみて感じた”体感の難易度”
ここからは、実際に受験した立場での実感をお伝えします。
意外だったのは、3科目のうち一番最初に受ける通関業法で、想像以上に手応えがなかったことです。本来なら関税法等や通関実務のほうが難しいとされているのですが、私にとっては最初の科目が一番ショックでした。おそらく緊張もあったのだと思います。「これはもう今年はだめかもしれない」と、試験の序盤で覚悟したくらいです。
ただ、フォーサイトで基礎をしっかり固めていたおかげか、応用が求められる後半の科目になるにつれて、逆に緊張がほぐれていきました。最初の科目でうまくいかなかった分、「最後まであきらめずにやりきる」というマインドに切り替えられたのも大きかったと思います。
もうひとつ、体力面のきつさも想定外でした。試験直前の8月・9月は気温も高く、勉強を続けているだけで体力を消耗している感覚がありました。知恵熱のような状態になることもあり、本番当日に体調を崩さないように、勉強と同じくらい健康管理にも気を使っていたのを覚えています。50代の受験は、若い頃の資格試験とは違う体力管理が必要だと痛感しました。
(体力との向き合い方についてはこちらの記事で詳しくまとめています)
合格後に気づいた”本当の難易度差”
試験の難易度について、合格後に改めて実感したことがあります。
合格後、通関業者で働くようになったとき、実務経験のある方が「あの試験は簡単だった」と話しているのを聞いて、正直かなり驚きました。同じ試験の話をしているとは思えないほど、感じ方が違ったからです。
普段からHSコード(輸出入する品物を分類するための番号)などに触れている実務経験者と、完全に未経験の状態で挑む受験者とでは、そもそもの前提知識に大きな差があります。同じ「15%」という合格率の中に、経験者と未経験者が混ざって受験している、ということを、このとき初めて実感として理解しました。
この経験も踏まえて、今の私は「合格率15%」という数字は、未経験からのスタートを考えるとおおむね妥当な水準だと感じています。
(合格後のリアルな実務についてはこちらの記事で詳しく書いています)
一発合格を目指すべき理由
通関士試験のような国家資格は、一度合格すれば一生ものの資格です。この点は、定期的に受け直さないと証明力が薄れていくTOEICのような検定とは大きく違います。
だからこそ、「一度で決めにいく」という意識が大切だと思っています。合格率の低さを気にして、慎重になりすぎて何年もかけてしまうと、かえって深追いしすぎて自分の理解がどつぼにはまってしまうこともあります。私自身、限られた範囲を繰り返し固めることを意識し、1年での一発合格を目指しました。
(実際の勉強法についてはこちらの記事、勉強時間の目安はこちらの記事で詳しく紹介しています)
まとめ:合格率の数字より、自分にとっての「妥当な難しさ」を知ることが大事
通関士試験の合格率は、直近10年で7%〜24%と幅があり、年によって「簡単そうに見える年」「厳しく見える年」があります。ただ、各科目60%以上という基準自体は変わらないため、どの年に受けても難易度の本質は大きく変わらないというのが、私の実感です。
大切なのは、合格率という表面上の数字に一喜一憂することではなく、専門用語の多さや科目ごとの特性、そして未経験からのスタートという自分の立ち位置を理解した上で、正しい勉強法で着実に積み上げていくことだと思います。
50代・未経験からでも、正しい方向で努力を重ねれば、合格率15%前後という数字は十分に超えられるラインです。この記事が、これから挑戦する方の不安を少しでも軽くする材料になれば嬉しいです。
